井口まみ
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岩手県の視察~その2 住田町

IMGP1262 住田町には、本当に前から行きたいと思っていました。震災の被害がほとんどなかった住田町は、地震の直後に、隣接する陸前高田や大船渡の被災者を受け入れるために仮設住宅を造り始めます。それも地元産の杉を使った木造の戸建て住宅です。もちろん仮設ですから9坪程度ですが、見てびっくり。壁には断熱材が入り、玄関には風除室があります。地元のペレットを使うストーブがあり、NPOの寄付で、太陽光温水器までついています。これまで見てきた仮設住宅とは天と地の差があるのです。そう!これを見たいとずっと思っていたのです。

IMGP1258 震災直後に直ちに建設に取りかかれたのは、じつはもともと地元産材を使った仮設住宅の設計図を作ろうとしていて、ほぼ完成していたときだったのでした。区域の90%以上が森林で林業以外に目立った産業がない。そういう町で、若い人に定住してもらうために、森林の育成から材木の消費まで途切れない流れを作り、製材のための工業団地、第3セクターの建設会社などをつくってきました。さらに、木造のすてきな町営住宅が大人気で、写真のような戸建て住宅が2万円そこそこの家賃ではいれます。こういう町の経済の活性化の一つとして取り組んでいた仮設住宅の設計が、思わぬ時期に生きたのでした。

びっくりしたのは、この木造の仮設住宅は、効率的だといわれているあのプレハブよりもずっと安いのです。材木も同じ規格でプレカットすれば安上がりなのと、今回つくられたほかのところの仮設住宅は、あとからあとから直さざるを得ませんでした。断熱材がなく寒い、お風呂の追い焚き機能がない、風除室がない、網戸もないなど、追加工事がものすごく予算を使いました。その地にあった住宅を造るという思想がなく、大手のハウスメーカーに丸投げした結果です。それから見れば実に理にかなった考え方で準備したことが、高い地元産材でも安く作ることができたというのも納得です。

被災地に来ていつも思うのは、ここで学ぶことは、何か非日常の特殊なことではなく、かならず通常の、川崎の市政に通じるものがあるということです。今回は地域経済の活性化が震災時にもいきるということでした。しっかり胸に刻んでいきたいと思います。