井口まみ
井口まみ井口まみ

前進座劇場最後のお芝居です

前進座1前進座の「三人吉三巴白浪(さんにんきちさ ともえのしらなみ)」を観に行きました。何年か前に前進座の歌舞伎を見て1回でファンになり、以来ほとんど欠かさず行っているのですが、吉祥寺の前進座劇場は、この公演を最後に取り壊されるため、ここに観に来るのは最後となってしまいました。

会場は大入り満員。当代の花形役者のそろい踏みにわくわくです。大見得を切るときに「大坂屋!」「山崎屋!」「豊島屋!」と、つぎつぎと掛け声がかかり、いかにも歌舞伎を見にきた!!という感じで、ほんとに楽しかった。

前進座が好きなのは、歌舞伎がわかるからです。歌舞伎座にわざわざ見に行っても、何を演じているのか解説を聞かなければわからない、それが歌舞伎の印象でしたから、最初に前進座の歌舞伎を見たときに、そのことを感想に書いて送りました。そうしたらすぐに返事をいただきました。「歌舞伎はもともと大衆演劇。だれもがわかるはずのもの。そういう歌舞伎をめざして前進座を作ったのです」と。わかるものなら、日本の伝統文化をよく知りたい、と通い始めました。河原崎国太郎さんや嵐芳三郎さんの動きがかっこよくて、あんなふうに優雅に動きたいものだといつも思います。

前進座2前進座劇場はとりこわされ、もう劇団専用の劇場はなくなります。これからは国立劇場にいかなければなりません。この劇場はたくさんの人たちの寄付でみんなで作ったということがパンフレットにも書かれています。劇場の外の壁に取り付けられているのは「平和の女神」。長崎の平和祈念像の作者である北村西望の作品だそうです。前進座というのはそういう思いの集まった劇団なのですね。一つの劇団が劇場も持って活動するというのはとても大事なことだと思うのです。会場を渡り歩き、けいこも場所探しをしなければならないというのは大きな負担です。しかもこの国が文化を大事にしないだけに、これからいっそうたいへんになるでしょう。伝統文化を未来に継承するためにも、ぜひ頑張ってほしいと思います。今度は国立劇場に観に行きます。