井口まみ
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商店街が舞台のお芝居、とってもおもしろかった

IMG_1746[1]「地蔵通り、メルヘン商店街」。お芝居の題名です。こんなかわいい名前の、でも今にもつぶれそうな商店街でくりひろげられる、商店街存続をかけた一大イベントへの道のり。大手スーパーの進出は食い止められるのか!!

「川崎演劇まつり」という1972年から続いている、市民と川崎市の協力でアマチュア劇団を育成する事業による公演です。パンフレットの1ページ目は、川崎市文化財団の理事長がごあいさつを載せ、川崎市や市教育委員会が共催しています。台本も川崎市に住み、川崎で演劇活動をしている丸尾聡さん。出演者も京浜協働劇団など、アマチュアで仕事をしながら演劇活動をしている人たち。私の家のすぐそばの、いつもおしゃべりしているおじさんがなんとこの劇団の代表だったりします。こんな自治体と市民の協働による演劇活動というのは全国でも珍しいとか。

さて「地蔵通り、メルヘン商店街」は、全国どこでも問題になっているシャッター通りです。先月も文房具屋さんが店を閉め、豆腐屋の息子も、八百屋の息子も、家を継ぐかどうか悩んでいます。商店会長は何とかお客を取り戻したいと、ミュージシャンになると言って東京に行ってしまった駄菓子屋の息子を呼び戻し、「show-天Guys」というダンスユニットを作って全国に売り出そうという計画を考えました。オーディションもやって、いろんな夢や悩みを持っている若者が集まりました。でもみんな、ちゅうちょするのです。こんなことやっても結局ダメなんじゃないか。どうせ大手スーパーが来ておしまいなんだ。自分はどうせだめな人間なんだ。どうせやっても無理なんだ…。

ひとりひとりが自分に問いかけます。本当は何がしたいのか。どういう生き方をしたいのか。ダンスを踊りたい若者が「これがやりたいんだ」と言います。コロッケ屋のおじさんが「自分はおいしいコロッケが作りたいんだ」と言います。商店会長はついに悟るのです。「人においしいと言ってもらいたいから作るんじゃなくて、自分がおいしい豆腐を作りたいから作るんだ」。この生き方をみんながしよう。そうすれば人はそのおいしさ、楽しさに気づいてやってくる。東京で挫折したミュージシャンも「自分が作りたい曲を作ろう」と決意し、それがダンスになって商店街のPR曲になりました。デビューイベントは大成功。私の家の近所のおじさん扮する新聞記者が、「こんな元気な商店街ならきっとたくさんの人がやってくるだろう」という記事を書き、大手スーパーは出店を断念して、幕を閉じます。

ストーリーを文字にしてしまうとなんだかお堅いのですが、いやあ、ほんとに楽しかったのです。ダンスもみんなとっても上手で、一緒にイベントに参加しているみたいでした。悩みを話し合っているうちに、励まされ、立ち上がっていく感じがとても共感できて、ご近所の遠慮のない会話が心地よくて。これはもっとたくさんの人に見てもらいたい。特に商売やっている人に見てもらいたいと思いました。