井口まみ
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給食は自校方式に限る!――高崎市を視察しました

高崎給食本群馬県高崎市に、給食を視察しに行きました。なんと「高崎市 奇跡の給食」というレシピ本まである、学校給食をホントに大事にしている市なのです。

市の教育委員会の紹介で片岡中学校にうかがいました。生徒数600ちょっと。川崎では中規模校です。政令都市ではないので先生は県全体で異動になりますが、こちらの校長先生も「高崎の給食が食べられてうれしい」と喜んでおられました。その特徴は、なんといっても「自校方式」を貫いていること。旧高崎市はもちろんのこと、合併で新しく高崎市になった地域がセンター方式だったら、順次自校方式に変えています。

また、県の配置以外に市独自で全校に栄養士を配置し、献立は学校ごとに立てています。その献立がすごいのです。年間を通じて栄養士も研修を積み、献立発表会もあります。食材も地産地消に徹し、子どもたちが献立を見ただけで故郷に愛着がわく、という感じです。栄養士会の皆さんは、ただそこにある食材に満足せず、地元の企業に依頼して、添加物のない高崎産の大豆と小麦を使った醤油、ソース、ハムまで開発してしまいました。その熱意が、ものすごい!

なぜ自校方式にこだわるのですか、と聞きました。教育委員会の担当者は「子どもたちの健康のためです」と話をされました。もともと、給食の質を問題にしたのは、学校医の先生方だったそうです。かつて赤痢など伝染病が問題になったとき、センター方式では被害が大きい。それぞれの学校には学校医と歯科医と薬剤師がついている。その人たちが協力してそれぞれの学校の給食を衛生的に健康にいいものを作れば子どもたちにとって大きなメリットだと、医師、歯科医、薬剤師が学校保健会を作り、そのバックアップで自校方式にしていったのだそうです。いまでも、給食室の衛生検査には薬剤師会が立ち会うそうです。

IMG_1951[1]試食させていただきました。この日はカレーうどん。だしが効いていてほんとにおいしい。パンは大人気の米粉パンです。野菜サラダは、地元農家が作った大根ときゅうりです。塩でもんでいるそうですが、味付けにほとんど塩は使っておらずおだしだけとか。なのにとても味わい深くておいしい。こういうところで濃い味付けにならない人生を送る出発点ができるのです。

IMG_1962[1]そのあと生徒たちの様子を見させていただきました。カレーうどんの食缶はあっというまに空っぽ!昼休憩に1時間10分も取っているので、準備も食事も余裕があります。川崎の子どもたちが20分そこそこで席を立っていくのとは全く雰囲気が違います。でも部活もちゃんとやっているし、やればできるんだなあという感じです。

IMG_1958[1]栄養士さんも素敵でした。自分の高崎の生まれ。高崎の給食で育って、高崎の学校の栄養士になりたくて進学したのだそうです。「夢がかなって幸せです」とうれしそうに語り、教室で生徒に一生懸命給食の歴史を語っていました。

川崎市の福田市長は2年後に全中学校で給食を始めると宣言しました。それは確かに市民の切実な願いですが、本当に子どもにとっていい給食にするのに十分な時間なのかということは、考えているのでしょうか。こんな高崎のような給食にするには、全校に給食室を作りたい。栄養士も配置したい。そういう時間があるのか、よく考えなければなりません。しっかりと議論していきたいと思うのです。

高崎しょうゆ帰りの新幹線の駅に栄養士会が開発した「高崎しょうゆ」は売っていたので、手に入りました。「高崎ソース」がなかったのが残念でした。レシピ本も作りたくなるものばかり。なんといっても1食300円程度ですものね。