井口まみ
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市民の飲み水が地下水100%の昭島市を見学しました

IMG_2751[1]川崎市は市内唯一の自己水源である地下水のくみ上げをやめて、それを浄水している生田浄水場を廃止するという計画をいまだすすめています。地下水をやめてしまうということは、ただおいしい水をやめることにとどまらない問題がある、と思い、地下水を使っている都市を見学に行くことになりました。それが東京都昭島市です。地元の稲田堤からは電車で40分もあればついてしまう、川崎市役所に行くより近いご近所です。「かわさきの安全でおいしい水道水を守る会」の仲間たち14名で、ワイワイと行ってきました。

IMG_2766[1]昭島市は人口約20万人。多摩区と同じくらいです。もともと三多摩地域は地下水が豊富で戦後水道施設をつくるに当たり、地下水をくみ上げて水源にしてきました。しかし、東京都全域で、東京都水道に一本化する動きが起こります。莫大な費用をかけて利根川水系にダムを作り、また、有名な金町浄水場で高度処理を行う費用もつぎ込むため、東京都の水道水はとても高いのです。昭島市は考えます。安くておいしい水道水のままでいくのか、値段が2倍も高い水にするのか。昭和60年代からつい最近まで都と協議しますが、ついに昭島市は独自の道を行く決断をします。そのかわり、地下水をくみ上げる能力は20本の井戸、一日5万トンしかありません。おいしい水を求めて大きな企業も立地しています。5万トン以上にならないよう、市民に徹底した節水をお願いしたのです。社会的にも節水があたりまえになるなかで、いまでは、一日38000トン程度で推移。昭島市民の自慢の水になりました。東京都内で、いま、100%自己水源で運営しているのは昭島市と羽羽村市のみ。武蔵野市が一部地下水を使っているそうですが、そういえば、福島原発の事故の時、金町浄水場の水から放射性物質が検出されて、稲城市も給水停止になりましたね。東京都のほとんどすべてが都の水道だということを知ったのがこの時でした。

IMG_2758[1]もちろん、地下水にもリスクがあります。地下水汚染が起きれば、どうしようもなくなるので、昭島市は東京都とも契約を結び、いざという時には給水できるよう一定の基本料金を払っています。武蔵野台地の深井戸から出る水は、ろ過する必要が全くないので、汲み上げたら塩素を入れて、すぐ配水できる。私たちには見慣れた広い「ろ過池」がなくコンパクトな配水施設だけで、維持費に大きな差がでることがわかります。これなら安いわけです。それでも毎年しっかり黒字なのです。

IMG_2755[1]身近な自己水源を放棄するということは、遠くの高い水を買わされるということ。それは市民にとってどうなのかということを、市民自身がしっかり判断する機会が必要だということを、つくづく学びました。川崎市はそのプロセスを怠りました。というか、はじめからダムありきだった。いま、その姿勢をどう正すかというたたかいをしているんだ、と思います。

生田浄水場を守る運動を始めて6年になりました。「かわさきの安全でおいしい水道水を守る会」が、市議会に請願をだし、3年前は共産党以外の全員の議員の反対で否決されました。その直後に東日本大震災があって、「災害時に56キロも離れた小田原から水が止まったら、市民の飲み水がなくなる」と新たに署名運動が始まって、3万もの署名が集まって、今年2月、趣旨としては同じ「生田浄水場を残してほしい」という内容でありながら、全会派一致で、「継続審議」になりました。その審議の中で、井戸は3分の2が残ることになりました。生田浄水場はあと2年で廃止の予定ですが、まだまだ希望の芽はあると、確信しています。