井口まみ
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「戦争の悪を憎む」――書展を観に行きました

IMG_4603[1]川崎市麻生区にお住まいの書家、笠原秋水さんのグループの書展を観に行きました。笠原さんのお名前も存じ上げず、書展を見るというのもほとんどなかったのですが、麻生区の勝又みつえ議員など、観に行った人たちから「とてもよかった」というので、ふらっと行ってみたのです。いや、感動でした。

作品を写真に撮ることはできないのですが、どうしてもたくさんの人に見てもらいたいので、毎日新聞の記事を添付します。この、「私は戦争の悪を憎む」という筆致のすごさ!!思いがあふれているのが、よくわかります。

http://mainichi.jp/feature/news/20150611ddlk14040248000c.html

このほかにも、笠原さんの奥さま、笠原逍汀さんの作品、「人生の並木道」には涙が出ました。畳3畳はあろうかというおおきな紙のまんなかに、佐藤惣之助が作詞した「人生の並木道」の歌詞が書かれています。「泣くな妹よ 妹よ泣くな」…。笠原さんは、私も観劇した川崎出身の詩人、佐藤惣之助を主人公にした川崎市民劇「華やかな散歩」を見て、この歌に遠い昔を思い出し、この書を書いたのだそうです。そしてなぜ思い出したのかという経過を、流麗に書いた歌詞の下にびっしりと、私の気持ちで言えば、ゴシゴシと書き連ねています。

戦争末期、川崎は大空襲で焼き尽くされます。その現場に逍汀さんはいたのでした。一家6人がばらばらに逃げます。逍汀さんは中学生の次兄におんぶされて逃げました。火の海からは逃げられたものの、川崎のまちは真っ赤に燃えていたそうです。翌朝自宅のあったところに行くと家は丸焼けで、お父さんと長兄の行方がすぐにはわかりませんでした。結局みな無事だったものの、その後、おんぶしてくれた次兄はことあるごとに、この「人生の並木道」を歌っていたのだった、と思い出したのだそうです。お兄さんがどんな思いで「泣くな妹よ」と歌っていたのかと思うと、胸が詰まりました。戦争がつくり出したたくさんの悲劇の、一つの思い出だったのです。

IMG_4604[1]笠原さんが主宰する秋水書道会は「だれでも読める・誰でもわかる書作活動」、「自分らしさを言葉と書で表現する」をモットーにしている、とパンフにありました。とても共感できました。笠原さんと直接お話しさせていただき、「もっとこうした活動をだれでもいつでもできる文化施設を川崎に」と要望されました。白と黒の世界にすっかり満たされた時間でした。