井口まみ
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子どもの貧困に向き合う講演会に行ってきました

2015-11-14 13.47.10調布市の社会福祉協議会が今年から低所得世帯の子どもたちの学習支援と居場所づくりを始めています。その開始に当たって記念講演を行うことを聞き、多摩川の向こう側のご近所なのでいそいそと行ってきました。講演者は立教大学の湯澤直美先生です。

子どもの貧困の問題では第一人者の湯澤先生。児童養護施設や母子生活支援施設の職員だった経験から、生の子どもたちの実態が浮き彫りになります。先進国では貧困が目に見えない。見えていてもそれが深刻な問題だととらえられないという特徴があると言います。お母さんはご飯を食べなくても子どもには何とか見栄えのする服を着せて学校に行かせてあげる。子どもたちも友達と距離を置いて一人でいれば、自転車がないこともばれずに済む。そういう生活になっていくのです。親子で餓死しても報道は一瞬だけ。それも自己責任みたいな言われ方をして、問題の本質をだれも掘り下げようとしない。そうしているうちに、貧困はどんどん進行し、いまや子どもの6人に一人が相対的な貧困になっているのです。

ここあこれはまさに人権問題であるとともに、未来の日本の希望をつぶします。さすがにユニセフが「先進国の子どもの貧困」をテーマにして勧告を出し、日本政府も深刻な実態に乗り出して、「子どもの貧困対策法」を作りました。国と都道府県が対策のための大綱を作り予算もつけるようになりました。その内容、実際に必要なこと。湯澤先生は詳しく解説してくれました。そして、この調布市が行っている学習支援と居場所づくりについて、その重要性について話を進めます。

国が生活保護世帯の子どもの学習支援に乗り出したのは、「貧困の連鎖」を断ち切るため、という発想です。低学歴の親が生活保護になりやすく、その子どもがまた低学歴のまま生活保護の受ける確率が高い、という統計によるものです。それ自体はそうなのですが、国はそこから、この学習支援の目標が高校進学になり、目標の指標が高校進学率になる。これではことの解決にならないのだと言います。貧困であるがゆえに家族や友人たちと信頼関係が結べず孤立していく、自己否定におちいっていく。その状況を一緒に解決し、信頼できる人に出会っていく場を提供することと、勉強がわかる喜びを同時に実感できる取り組みが求められているのではないか、というのです。なので調布市は学習支援と何にもしなくてもそこにいていい居場所づくりを一体に行います。学習支援も1対1が基本で、学生ボランティアを募集しています。

わがくらしの相談センターでは、9月の5周年のつどいで、子どもの貧困をテーマに講演会をしましたが、それも「貧困が見えない」という問題意識からでした。こうした活動を通じて、いま、私は、まだまだやらなければならないことがあるんだなあと、本当に視野が広がっています。地元にはフードバンクで頑張っている人たちもいるし、できることをもっとやっていきたいと思うのです。

よその自治体の話を伺いに来ると、思わぬ収穫があります。東京都の社会福祉協議会が出している『これからのことで悩んでいるあなたへーー高校を卒業したい、大学や線も学校に進学したい、働きたい 』という冊子。あらゆる制度をわかりやすく紹介してあり、とても参考になりました