井口まみ
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環境委員会の視察で大阪市に来ましたーー港湾と水道ビジネス

IMG_6977[1]毎年1回、常任委員会で視察に行きます。今年の環境委員会は、大阪と浜松市です。1日目は大阪市。「国際コンテナ戦略港湾 阪神港について」と、「水道事業の国際展開について」。どちらも川崎市も力を入れている事業です。川崎市にどう参考になるのか、ものすごい関心をもってやってきました。

国際コンテナ戦略港湾とは、日本で2か所、阪神港(大阪港と神戸港を合わせて指定)、京浜港(東京港、横浜港、川崎港)を国が特別に支援して、アジアで急成長した他の港湾に集中しているコンテナの取り扱いを日本に呼び寄せ、この2つの港で世界のコンテナを扱う一大物流拠点を作ろうというものです。当面の目標は世界第5位の取扱量を誇る韓国の釜山港を追い越そうというものですが、そのためには阪神港も京浜港も今の倍はコンテナを呼び寄せないといけません。その中で川崎港のコンテナターミナルはとても小さいので、もっと設備投資をして大きくして7倍以上のコンテナを入るようにするという取り組みが続けられています。

IMG_6981[1]大阪港もたいへん苦労していました。コンテナを集めるために補助金を出したり、企業が立地したら地方税を5年間ゼロ、さらに5年間は半分、などの取り組みをしています。釜山港は20年前、国を挙げて巨大なコンテナターミナルを築き、それまで日本に来ていた北米航路を引き寄せましたが、どうしてそうなったのかと質問すると、担当者の方は「船会社は、効率よく荷が集まるところに集まり、そうなるとさらに便利になって荷が集まるようになる」と言います。つまり国家プロジェクトで巨大な港を作っているアジアの各地に、大阪にしても川崎にしても、自治体が何とか手を打っているようなところは太刀打ちできないということではないでしょうか。日本政府のやり方は、掛け声はすごいけど、まともじゃないという感じすら受けました。

IMG_6980[1]次は「水道事業の国際展開」。これも国が笛を吹いて、川崎市も一生懸命やっています。北九州市と大阪市が全国に先駆けて目に見える事業をやっています。もともと、国の言い方は「水ビジネス」です。世界の水道を作りに行けば、数十兆円のビジネスだと言います。日本の水道システムの技術は世界に冠たるものですが、自治体しか持っていませんから、世界に進出するには自治体が一緒に行ってくれないといけないというのが、国の方針でした。大阪市はホーチミン市と協定を結び、5年間かけて、浄水場から家庭に水を配るための配水場を日本の企業が出資して20年間管理も行うPPPスキームという仕組みを大阪市がアドバイザーとして中心になって考えました。いよいよ実現するかという段階になっているのですが、ホーチミン市側が検討するということで、一度棚上げ状態になっているというのです。聞いてみると、日本側の提案は水道料金を1・4%値上げしないと市の負担が発生する、つまり赤字になるというのです。日本の企業が管理運営するのですからもうけをださなければなりません。日本なら自治体が運営するのですから設け入りません。ここにこの仕組みのおおいなる問題点があると感じました。

国が笛を吹いて企業にも進出せよと発破をかけているようですが、うまくいっている例は本当に少なくて、国も今年方針を見直すそうです。誰かが「はしごを外されましたね」と質問したら担当の方は苦笑していました。世界最高の技術で支援して、世界の水を安全にすることで世界に貢献すればいいのではないでしょうか。こちらも川崎にとって本当に勉強になりました。