井口まみ
井口まみ井口まみ

高齢者介護、障害者支援の現場でいま

2008,06,06, Friday

5月30日、冷たい雨の日になりました。市内の高齢者介護施設、障害者支援施設で働く皆さんや当事者の方に集まっていただき、学習シンポジウムを開催しました。
テレビでも大騒ぎになっていますが、介護施設など福祉施設で働く人たちの給料があまりに安くて、どんどんやめてしまうことが社会問題になっています。講師としてお話いただいた立命館大学の小川栄二先生によれば、特別養護老人ホームに就職した人の半数以上が1年以内にやめてしまう。二年以内の人を含めれば7割になるのです。ということは50人の職員のいる施設では、3年以上働いている人は15人に過ぎないということです。
若い人が福祉の職場につきたいという希望を持ってくるのに、働き続けられる給料が出ない。結婚もできない。その根源は国が決める報酬単価があまりに低いことです。そして低いことを知りながら自治体が十分な補助をしないことです。人が集まらないので残っている人にはいっそうたいへんな仕事をさせなければならない。そんな実態が敬遠され、いま福祉の専門学校は定員割れをしていると聞いて、本当におどろきました。
働き続けられないということは、その人にとっても不幸ですが、問題はそれにとどまりません。私はいま、おもに障害者の問題を担当していて、あちこちの施設を見学しているのですが、こういう職場は、専門性がとても必要だということを実感しています。障害や病気に対する知識や経験がないと、本当にその人に必要なケアができないのです。長く働けないということは、その専門性や経験を身につける時間がないということ。これは福祉の持続性にとっても重大なことです。
先生の講演のあと、何人かの方が発言しました。本当にたいへんな実態が次々と出されましたが、どの方の発言も、ただたいへんだ、たいへんだというだけでないことにとても励まされました。「福祉の仕事というのは、人間の根源的なしごと。これほどすばらしい仕事はない。続けたいから続けられるように求め続けていきたい」「自分の人生は一回だけだが、高齢者のお世話をすることでたくさんの人生を歩かせてもらっている。一人一人の方が幸せだったと思えるような施設を作りたい」…。こういう方たちに支えられて川崎の福祉は成り立っています。だからこそ絶対に働き続けられる報酬にさせていきたいと思いを新たにしました。