井口まみ
井口まみ井口まみ

50年なのだそうです

岡山の研修会で繰り返し「50年」という言葉を聞きました。社会保障に携わる人にとって、とりわけ岡山の人にとって、今年は意義深い年なのだと知りました。「朝日訴訟」の第一審で勝利判決が出て、50年なのです。

untitled 岡山で生活保護を受けて長期入院をしている朝日茂さんが、生活費が月600円というのは、憲法25条に違反するとして国を訴えた裁判で、岡山地裁は画期的な違憲判決を出します。国が控訴し、最高裁で争っている最中に朝日さんが亡くなってしまい、裁判そのものは終わってしまうのですが、この一審判決が憲法25条を大きく発展させたと、私は高校の教科書で習いました。この朝日訴訟50周年にあたり、判決文を書いた、当時の裁判官が、その手書きの原稿を朝日訴訟を記念する会に寄贈したというのです。このことを、関係者の皆さんが口々に語り、朝日訴訟の意義を述べました。

さっそく、記念する会の冊子を買い、元裁判官の方の思いを知ることができました。憲法が施行されてようやく10年余、「健康で文化的な生活」とはどういうものか、裁判官も正面から問われて、ものすごく悩んだと書かれています。そして実際に朝日さんが入院している病院を見て、本人にも会って、これは明らかに違憲だと確信したと。それを50年たったいま、伝えておこうと思ったと書かれています。

研修会で、ある講師は「50年たったのに50年前と同じような貧困問題を議論しなければならないのは情けない」と言われていましたが、ほんとにそうです。でもそれが現実なら先人に学んで先人に恥じないたたかいをするのが私たちの役割だと、この冊子を読みながら思ったのでした。