井口まみ
井口まみ井口まみ

一人一人が輝く生き方を

多摩市民館で、障害者団体や社会福祉団体が共同でお祭りを開きました。舞台での発表や作業所で作ったものの販売、手話の講習会や車椅子の無料修理など、日ごろのつながりを生かしてさまざまな人たちが一堂に会して楽しい一日を過ごそうというものです。

untitled 大ホールでは、ザ・ボルケーノというラテンバンドの特別公演がありました。私も役員をしているなごみ福祉会の療育から生まれたバンドです。子どものころ障がいがあることがわかって、療育という専門のケアを受けているあいだに、音楽が大好きになり、得意な楽器を見つけ、いまでは、その療育のスタッフと一緒に、このボルケーノとして、海外公演までしてしまう人たちです。1時間の演奏はあっという間。もう楽しくてかっこよくて、もっと聞きたい!と思いました。

ボルケーノには、一度曲を聴いたら絶対に忘れない人がいます。マリンバを天才的に演奏する人もいます。その音に誘われて、客席で小さな子どもたちが、われを忘れておどりだし、最前列で聞いていた人が、たまらずに立ち上がって一緒に歌っていた姿を見て、一人一人の個性が本当に輝いて、生きているんだ!ということが実感できて、なんだかほんとに感動しました。

こうした実績を作ってきた音楽療育。この音楽療育の記録映像を見たことがあります。専門のケアを受けたことがなく、ずっと家にいた子がお母さんに連れられてやってきます。知らない人が小さな部屋にいるので、その子は怖くて部屋のすみに固まっています。突然太鼓の音。いろんな楽しそうなリズムを打っているうちに、その子の手がピクッ、ピクッと太鼓に合わせて動き出します。まだねころがったままだけど、スタッフの顔は絶対に見ないけど、リズムを刻み始めます。その手にバチを持たせると、太鼓を打つまねを始めます。3時間もしないうちに、ついに立ち上がって一緒に太鼓を打ち始めるのです。その子は1年後、服を自分で着替えて、一人で舞台に向かって歩いて、みんなと演奏ができるようになります。

実はこの民間の団体の療育というのは、市から補助がなく、運営がたいへん厳しいものです。ボルケーノは本当に楽しそうで、わたしも入れて欲しいと思いましたが、そんな時間はないので、せめて私ができることは、福祉の予算を一生懸命増やすこと。このすばらしい笑顔を絶やさないこと、だと思いました。