井口まみ
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神戸市も先端医療都市をめざしています

川崎市が国から「国際戦略総合特区」というのに指定されたと喧伝しています。いったいなんなのか、どうなるのか、よくわかりません。同じようなことをやっているという神戸市を視察しました。

川崎市が神奈川県、横浜市といっしょにやろうとしている京浜臨海部の「国際戦略総合特区」というのは、先端医療の研究・開発をこの地域で行わせるために、税制の優遇や規制緩和できるよう、国が特別に指定するものです。再生医療やがんの治療薬を開発し、その技術を使ってここに生産工場などを誘致して、新たな産業をおこし、雇用や税収を格段に増やすという計画です。計画では5年後に3000億円の経済効果、20年後には23万人の雇用が増えると言ううたい文句です。

神戸市も、そっくりおんなじうたい文句で15年以上前に、広大な埋め立て地に「先端医療都市」を作りました。ほんとにおんなじ触れ込みなのです。「同じコンサルタントがやってるんじゃないか」と疑うくらいです。確かに研究施設はできました。市が出資した外郭団体がつくった小さな研究室がたくさんある建物に、家賃の優遇がある3年間は小さな会社が研究室を作ります。それが200程度あるそうです。しかし、3年たつとでていってしまう。200から増えません。土地を買って進出する企業はこの経済情勢の下で増えず、空き地がずっとあります。そこで、市立や県立の病院をわざわざひっぱってきて、元の地元の人たちから反対が起きています。立派な市立中央病院が移ってきましたが、こんな埋め立て地では、地震の時にまた孤立するのではないか、あの教訓は何だったのか、と言われています。この中央病院で働く人が約1000人。移転したこの1000人を含めて、雇用は15年たっても4000人だそうです。

医療技術の開発は人類の進歩にとって欠かせません。しかし、それを産業と結び付けて、自治体が乗り出すというのは、どうでしょうか。自治体の仕事は住民の生活を守ること。人類の進歩に税金を使うのは国の仕事ではないでしょうか。しかもそのいっぽうで、生活に事欠いて病院に行くことができない市民がたくさんいます。このアンバランスに目をつぶるわけにはいかないと思います。神戸市は広大な空き地を売らないと、この埋め立ての赤字を解消することができません。そんな財政構造にする前に、川崎は手を引くべきだとつくづく思いました。