井口まみ
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弾丸視察レポートその2–豊中市コミュニティソーシャルワーカー(CSW)

IMG_2895[1]ご存知、NHKの「サイレントプア」というドラマのモデルです。エンドロールで「豊中市社会福祉協議会」「勝部麗子」という名前を毎回見て、一度視察に行きたいと熱望していました。その、勝部さんに直接お話を伺うことができました。こちらも熱い思いを持ったパワフルな女性でした。

IMG_2896[1]CSWは、10年前大阪府が独自に作った制度で、地域社会の中で助け合う組織作りのために配置したワーカーだそうです。勝部さんはそれを真正面から実践しました。たとえばドラマの第1話で登場したごみ屋敷の解決は、まさにドラマのように、その人のところに2年間も日参し、やっと口を聞いてもらい、解決したいと思っていることをつかんで、近所の人たちに集まってもらい話し合って、合意して、みんなで掃除をして口をきくようになり、その人自身の思いを受け止めていく。そういう地域づくりをしています。

勝部さんは、「困った人は実は困っている人。支援を必要としている人。制度のはざまで助けられない人を見捨てない」といいきります。会話を拒むホームレス。何十年も自宅に引きこもったまま両親が年老いていく人。初期の認知症とわからず孫を連れて行方不明になった人。その人たちを全力で地域の中に連れ出し、ともに困っていることを解決していきます。その様子はドラマで再現されていました。

実は私は、あのドラマに最初とても反発を感じました。そんなにうまくいくわけがない。これはドラマだからハッピーエンドにしたのではないか。しかしちがうのです。勝部さんは本当にそういう実践をしていました。ドラマのライターはもっとドラマチックに深田恭子さんの恋愛ものにしたかったそうですが、1話10時間もかけて、CSWの本当の姿を描いてほしいとがんばったのだそうです。たまたまこの日の夜、NHKで勝部さんの仕事ぶりがドキュメンタリー番組で放映され、ホテルで見ました。勝部さんが2年間かけて通ったごみ屋敷がきれいになっていく様子が映っていました。

IMG_2903[1]社協の地域の拠点である福祉委員会の事務所も見させていただきました。ボランティアを40年やっているという女性たちが歓迎してくれ、地域で1軒1軒訪問してどんな人が住んでいるのか、困ったことはないのか聞いている活動を教えてくれました。「たいへんよ~」といいながら、自分たちが地域を守っているという誇りがあることを感じました。

IMG_2899[1]本当にすごい仕事ぶりです。職場の後輩の皆さんは「勝部さんだからできると思う。しかし勝部さんにできることが自分にできないというのはくやしい」と言うのです。カリスマがひとりいて、その人しかできないことなら、確かに広がりませんが、同じCSWが育っていて、地域が育っている。こういう町でなら、起こる可能性があった孤立死、孤独死をいくつも防ぐことができるかもしれない。わたしも相談センターの活動に生かせることはぜひ生かしていきたいと思いました。

しかし、勝部さんはドキュメンタリーの中で、一人の孤独死が防げなかった場面に遭遇し、「どうすればいいんだろうねえ」と涙を流します。私は思います。地域のつながりを改めて作ることはどうしても必要で、それにさえこんな努力が必要です。でもそれだけでは孤立は防げない。政治がもっとあたたかくなければならない。リストラをし、年金を下げ、介護保険も医療も使えないようにし、弱いものは生きることが悪いかのような思いにさせる政治が絶望を生み出しているのだと思います。それをかえるのは私たち政治家の仕事だとつくづく思いました。