井口まみ
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弾丸視察レポートその4‐‐神戸市「認知症初期相談支援チーム」

ちょっと日があいてしまいました。視察の最後は、神戸市でした。初期の認知症の患者さんに寄り添った相談支援を行うという事業です。

認知症は早期に診断できれば進行を遅らせる薬もあるし、まわりの対応も適切にできますが、なかなか本人や家族も気が付かないこともあります。そこで、地域にある包括支援センターの一つを「認知症強化型地域包括支援センター」を指定し、本人や家族、病院などから「もしかしたら認知症かと思うが、相談にのってほしい」という依頼を受け、訪問に行きます。そこでいろいろ調査するのですが、ご本人が否定するときには「認知症の調査」といわず、「高齢者の健康チェックの訪問です」などとして、いろんな会話をかわし、そのなかから認知症の特徴を拾い出して、チェックシートを作成します。それを「チーム員会議」といわれる、専門医、精神保健福祉士、包括支援センターなどが集まる会議をひらいて「この病院にかかりましょう」などの支援方針を決め、受診に同行したり、介護保険の利用につなげるなどの支援を行います。さらにそのあとの状況も調査を行っています。

これは昨年度国が「初期集中支援チーム等設置促進事業」というモデル事業を全国14か所で行ったものです。神戸市は昨年9月から長田区だけで始め、3月までで42件に訪問。17人が認知症と診断され、8人は認知症以外の病気と判明するなど、一定の成果を上げています。わたしのまわりでも、ものわすれ外来に行くことをものすごくためらい、家族にとても心配をかけながらそのままになっている人や、一人暮らしで知らない間に症状が進行している人など、この制度に乗せたいと思う人が何人も思い浮かびました。

しかし簡単にできる事業でないこともわかりました。国がモデル事業として予算を出したのは昨年度だけ。今年ははしごをはずして、一部補助金を出す事業にしてしまいました。診断などを正確に行う専門家の養成も必要です。地域のかかりつけ医を見つけるのも大変だろうなあ、と思います。国は3年後には全国の自治体でこれを実施する方針だそうです。理想はいいけれど、実際に行うためには相当の準備が必要だということが分かった視察でした。