井口まみ
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昨年夏、6日間も小田原からの水が来なかった―議会に報告がありました

5月30日の市議会環境委員会で、上下水道局から「緊急時における水道用水に関する相互協力の実施について」という報告がありました。一見して何の事だかわからないようにしている所にも意図を感じてしまう、大事な報告でした。

川崎市は、市民の飲み水を、相模湖から取った水を長沢浄水場(川崎市多摩区)で処理して供給するのと、神奈川県内広域水道企業団が小田原からの水を企業団の西長沢浄水場(川崎市宮前区)で処理したのを買って供給する、二つの方法で配っています。この、小田原からの水が、昨年7月29日から8月3日まで6日間ストップしました。生田浄水場がなくなった今、企業団の水が来ないと、川崎市民の飲み水は足りなくなります。重大なことが起こっていたのでした。

市の報告は、さらさらと簡単にされたので、くわしく書くと、小田原(取水しているのは飯泉取水堰というところ)と西長沢浄水場とはものすごい標高差があるので、何度も巨大なポンプを使って水を持ち上げています。そのうちの相模原ポンプ場で4台のポンプのうち3台がほぼ同時に壊れたのです。原因はメンテナンスで交換した部品が間違っていたからでした。7月16日と19日には、電動機の付属部品の材質をまちがって取り付けたため、加熱して膨張し電動機にぶつかって火花が出て燃えたというもの。7月29日には、電気設備内のヒューズが設計ミスで流れる電流の容量に会わないものを使ったため、溶けて壊れ緊急停止したというものでした。

交換すべき部品はすぐわかったので、8月3日には壊れた3台のうち2台が仮復旧し、無事だった1台と合わせて3台が動いたので、8月3日の途中から通常通り水を流すことができた。しかし最も重症だった1台がなおったのは12月だったとのことです。故障の原因が確定したのは11月で、同様の部品を使っているポンプの調査、交換などを行い、それらの費用はすべてメンテナンスを行っている製造メーカーが負担するということでした。ちなみに川崎市の施設に同様のポンプはないそうです。今年3月には厚生労働省がこの事故は重大だったとして、全国の水道事業者に同様の部品がないか点検せよと通達も出されていました。

さて、その水が来なかった6日間、川崎市と横浜市は、自分たちの水源である相模湖からの水を増やして流しました。もともと川崎市が相模湖から取ってもよい水の量(水利権)が国土交通省から決められており、普段は全部使っていなかったので、今回の緊急対応として上限いっぱいの水を流しました。が、それは自分の所ではなく、企業団の西長沢浄水場に流してあげました。一日約14万トンです。横浜もおなじように10万トン。しかしそれでも足りないので、企業団は、相模湖に水利権を持っていないため、相模大堰という相模川の下流の水利権を国土交通省から特別につけかえてもらって、約19万トンを相模湖から流してもらいました。こうして、一日約43万トンの水を確保しました。

ここから何がわかるでしょうか。川崎市が企業団から買っている水は、小田原からポンプで延々50キロ以上持ち上げて、ようやく川崎にやってくる。そのどこか1か所でも途切れると、たちまち水が足りなくなるということです。今回は、短期間であり、水利権の付け替えというアクロバットのようなことができたのでなんとかなりましたが、水利権というのはとても厳格なもので、いつでもちゃっちゃとできることではありません。こんな、なんだか初歩的なミスで簡単に止まってしまう企業団の水。災害などで企業団の水が来なくなり、川崎市の水が相模湖だけになってしまったら水は足りないことを証明したのです。

廃止された生田浄水場は一日10万トンを供給できました。相模湖の水とこの生田浄水場の水で、日常的な市民生活に必要な水量はまかなえるはずでした。それを廃止し、コストも高い企業団の水をメインの供給源にシフトしたことは、市民生活に重大な影響を及ぼすことになる。この10年間言い続けてきたことがまさに明らかになったと思います。

さて、今回の委員会への報告は、そういう事故があったけど、ちゃんと対応して、最終的に企業団とのお金のやり取りも含め手続きが終わったのでその報告です、ということでした。お金については、企業団の水を買わなかったので6日分1020万円は払わないけど、西長沢浄水場に一日14万トン供給してそこで浄水してもらったので、その分の浄水費440万円は払います、という話でした。私は、委員会で、「委員会に報告すべきは、手続きの問題ではなく、こんなに重大なことが起きたという問題そのものだ」とただしました。議会に報告するとは、市民生活に大きな影響がある問題を、市民の信託を受けた議員に報告することで、市民を守る方策を多方面から考える場を持つということです。私はこの問題は4月に知り、担当者には事実関係を聞いていました。しかしいっこうに委員会に報告がない。やっとやったとおもったら、お金の精算が終わりました、とは、いったいなんなんだ。事の重大さをわかっていない表れだし、結果として隠ぺいにひとしいのではないかと思ってしまします。「今後、水の供給という問題で何かあったら、企業団のことであっても必ず議会に報告すべき」というと、「そのように対応する」という答弁がありました。市民には当然知る権利がある。それをつなぐのが議員の仕事だと思います。