井口まみ
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6月議会報告--中国の海警法に抗議する2つの意見書案が出ました

6月17日、本会議で2つの似て非なる意見書案が提案されました。テーマは中国が作った海警法に対して、断固抗議すべきだというものなのですが、私たち共産党が出した案と、自民党案…みらい・公明が共同提案<以後「自民案」と表記>です。いったい何を求め、何が違うのか。その立場がくっきりと現れました。

共産「中国政府への抗議&外交的対応」か、自民「軍事同盟強化」か

ことの経過はこうです。共産党が「中国がつくった国際法を無視する海警法に対して、日本政府が抗議し外交的な対応をすべき」と求める意見書を提案していたところ、その後、自民党が中盤までほぼ同じ内容ではあるものの「中国政府への抗議&外交的な対応」を削除したうえ「積極的平和主義に基づく対応&日米同盟の強化」を押し出した意見書案を出してきたのです。

似たような意見書案が二つ出されたので、市民にとっては「なぜ共産党が一つは賛成して、もう一つは反対するのか?」と疑問を持つことになるので、私たちは正面から反対討論を行うことにしました。これを読んでいただくと、何が違い、何が問題かがよくわかります。

共産党の行った反対討論(自民党意見書案にたいする)

宗田裕之団長の行った反対討論は以下の通りです。


私は、ただいま議題となりました意見書案第7号「日本の領土及び東シナ海の平和を守るための更なる対応を求める意見書」について、日本共産党を代表して討論を行います。

この意見書案の第一の問題点は、中国政府の海警法の制定など国際法の規範を無視した横暴な行動を批判し撤回をするよう国に求めるものになっておらず、また外交的な対応も求めていないことです。中国政府に国際法違反を改めさせること、また周辺諸国や国際社会とともに中国政府が国際法違反を行っているという事実を共有し、国際的に中国を包囲して、その覇権主義的行動を改めさせることこそ、この問題の解決の道だと考えます。

第二の問題点として、この意見書案が「積極的平和主義」「日米同盟強化」などを国に要望するものになっており、この立場では軍事的対応の悪循環に陥ることになりかねないことです。

まず「積極的平和主義」についてですが、2015年9月に多数の国民の反対の声、圧倒的多数の憲法学者の反対の声を無視して強行された安保法制も、「積極的平和主義」の名で提案されたもので、日本が他国から攻撃を受けていない場合であっても他国に武力行使ができるという日本国憲法を踏みにじるものでした。「積極的平和主義」による対応は最も危険な軍事的悪循環を招くことになりかねません。

また、この意見書案は日米同盟の強化を求めていますが、そもそも米国は国連海洋法条約に署名していません。4月16日の日米首脳共同声明でも「中国の不法な海洋権益に関する主張及び活動」と述べるだけで、中国の行為や海警法が国際法違反であるという指摘は行いませんでした。日米同盟強化など軍事的な対応を強めることになれば、アジア地域の軍事的な危険を高めることになりかねません。

中国政府に対し日本政府が直接、国際法違反だと指摘し改めるよう求めること、周辺諸国はじめ国際社会に外交的に働きかけて解決をはかることなど、対話による平和的な解決の道を取ることこそ求められています。また、こうした平和的解決の立場で取り組むことこそ、日本国憲法の平和主義の精神に則った、我が国が国際社会に果たすべき役割であると確信するものです。

これらのことから、日本共産党は本意見書案に反対することを表明いたしまして、討論を終わります。


共産党案には、無所属議員が5名賛成したため、16名の賛成で否決されました。自民党案には、公明、みらいのほか、無所属議員6名が賛成し、44名の賛成で可決したのです。無所属議員は8名なので、どちらにも賛成したり、どちらにも反対した人がいて、こういう結果になりました。

二つの意見書案を張り付けておきます。上が共産党案、下が自民党案です(下線は筆者)。共産党案を読んだ議員たちからは「共産党は中国に対してほんとに厳しい態度をするんだね」と声が上がった一方、こういうところにも与党は危険な思惑を押し通すんだなあということを明らかにした議論でした。

意見書共産党案

意見書自民党案