井口まみ
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夏の研修会‐水道の広域化について

218686421_1865606036954649_4539500020566943874_n毎年この時期に「自治体学校」というのが開催されます。全国の自治体職員や研究者、議員などがつどい、今の社会全体から自治体の在り方などを様々なテーマで話し合う、大きな研修会です。全国各地を渡り歩いてやっているので、そこに行くのも楽しみだったのですが、今年はZOOMでの開催。記念講演は、DVDが送られてきて、広い会場でみんなで共感しながら学ぶ楽しみがなくなって残念ですが、開催してもらっただけありがたい。最新の研究を学ぶとともに、全国の経験を聞くことができるのはまさに頭に直接栄養を注ぎ込むような感覚です。

218699676_1865606183621301_8002299701481067384_n7月18日に参加した分科会は「水道広域化と民営化ー広域水道に住民の声は届かない」。おりしも神奈川県がゆるやかなやりかたで広域化の動きを始めているところだったので、本当にタイムリーでしかも本質がよくわかり、とても勉強になりました。これまでは民営化が大問題になっていました。しかし世論の高まりで民営化の策動はかなり抑えています。そこで国は「一つの県に1つの事業体にする―水道事業の広域化をただちにすすめよ」と大号令をかけています。

香川県はすでに全県を一つの水道事業者に統合しています。一貫して反対を貫いている市会議員さんから、そのあまりに無理無体ぶりが報告されました。千葉県袖ケ浦市の市会議員さんからも、君津地域の広域水道企業団に統合されていった経験をうかがいました。ほかにも報告がいくつもあったのですが、全部理由は3つ。「水道設備が老朽化していて、個々の事業者がそれぞれ更新するには莫大なお金がかかる」「人口減少により、施設が大きすぎるのでダウンサイジングが必要」「団塊の世代の退職により、経験ある職員がいなくなっているので、ひとところに集めないと足りない」。全国同じ理屈です。国が主導し、言わせているのです。

218901487_1865606500287936_2931634212869545608_n広域化する、つまり市町村に水道局がなくなり、ほかのところで水道が運営され、水道料金も勝手に決められる、そういうことになるだけでなく、こうすれば民営化が自由にできるようになるというのが狙いです。広域化した事業体が一部事務組合、企業団になると、基礎自治体の議会の目は全く届かなくなり、市民がチェックすることができなくなる。千葉ではすでに水メジャーがかなりの運営部門の委託をとっているそうです。

215235060_1865606343621285_2794552479106563673_nなぜ、国がそうまでして広域化、民営化をすすめるのか。もちろんそこに水メジャーと呼ばれる大企業の儲けの確保があります。同時に、これから人口減少になった時、水道を維持していくには、かなりの維持管理費が必要で、水道料金を上げるのに、いまのままでは市民の反発が強く、うまく上げる方法が必要なのです。

たしかに水道の維持管理費はなかなか下げられません。とくに大きな施設を作ってしまったところが苦しんでいます。それはなにか。ダムです。結局ダムを作って、水道料金で支払わせようとしてきた、そのツケがいま市民に押し付けられている。今日の最後の問題提起は「ダムのツケは市民は払わなければならないのか」でした。

回答は明確でした。押し付けているのは国のダム政策です。命の水にいらないコンクリ―トの代金をのせることは許されません。国が自分でしりぬぐいをするべきだ。これは、川崎にまさに当てはまります。昨日も書いたように、川崎の自己水は、自然流下で末端まで届くとても安くておいしい水です。なのに、神奈川県内広域水道企業団のために国が作った宮ケ瀬ダムの借金のために企業団から高い水を買わなければなりません。ダムがなければ、川崎の水道はずっとおいしくて安い。もちろん生田浄水場が復活すればもっとおいしくて安くできる。いらないダムのツケは国が払うべきだというのが、今日の分科会の結論でした。

川崎で生田浄水場の復活のために活動を始めて10数年。初めは全国でこんなに水道のことを考えている人たちがいるなんて全然知りませんでした。この人たちと出会い、毎年自治体学校で交流をさせていただいている中で、「おいしくて安い水を求めるのは当然の権利だ」と確信できるようになりました。自治体学校は頭に栄養を注ぐだけでなく、頑張ろうという確信も培える場です。今年はあと3つ分科会に参加します。楽しみです。