井口まみ
井口まみ井口まみ

不破さんと水上さんの往復書簡

2007,09,05, Wednesday

その日、私はものすごく怒っていました。9月議会の代表質問の原稿を分担し、私は市営住宅に入れない人たちのために、「市営住宅を増やすべき」という項を担当して、行政の人にどうやったら増やせるのかと、話していたのです。ところが、国が「もう公営住宅の役割は終わっている」とばかり、建設費補助を打ち切り、市もそれを理由に「これからは市営住宅は建てない」と決めているというのです。しかし申し込みは多いので、申し込める条件を厳しくして、申込みする人を減らすという方法でしのごうというのです。冗談ではありません。庶民の懐はいっこうにあったかくならず、給料も年金も減っていくばかり。家賃の重さはもう耐え切れないところに来ている人がたくさんいるのです。この実態をみようとしない行政の冷たさに、怒り心頭で、原稿どころではなくて、ぷんぷんしながら電車に乗って帰ってきました。この電車の中で、よみさしの本を広げたのです。それが『同じ時代を生きて―水上勉・不破哲三 往復書簡』でした。
2007,09,05, Wednesday

政党の委員長と、高名な作家が、ある日、ともにかかえる心臓病の治療を聞くことから交流が始まります。お互いに忙しい身。年に何回も会えるわけでありません。しかし、手紙やファクス、電話の交信で、その時々の思いをぶつけあい、体をいたわりあいます。たまに会えば、おいしいものを食べながらのびやかな思いを交換して、一つの時代を生きてきた実感を感じあう。互いに老境に入ってから知り合ったとは思えない、「地下茎でつながっていた」と本人たちが思うようなつながりが感じられます。この交流の中で水上さんが不破さんに「他の党首にはまねのできない人間味にあふれている」と選挙での推薦文を寄せたことは、勇気のいることだったでしょうし、それだけ信頼していたのだと思いました。こんなすてきな出会いがあったら、どんなに心の支えになるだろうと思えるお二人の交流でした。
電車の中で、とんがっていた心が次第に落ち着き、京都や若狭、長野や丹沢の自然の息遣いを感じてきました。「政治の世界では、すぐにはうまくいかないこともあるけれど、必ず見てくれている人はいるし、出会いを大切にして、こつこつとやっていこう」と思えるようになり、穏やかにうちに帰ることができました。もちろん市営住宅建設は、怒りを燃やして議会で取り上げていこうと思います。不破さんのように理路整然と、人間味にあふれて。