井口まみ
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障がい者の通所施設「地域活動支援センター」を視察しました

313427274_2224349404413642_7076773313834862248_n9日、川崎市内の障がい者施設を議員団で視察しました。午前中は川崎区の糸ぐるまさん。身体障がい者の施設から出発した作業所で、企業さんから依頼された軽作業や、自分たちで作った箸袋などを作って売っています。午後の喫茶ほっとさんは精神障がい者を対象として、市の施設の中で喫茶店を開き、お菓子工場でケーキなどを焼いています。それぞれ特徴を活かしながら、利用者さんを支援しています。

今回伺ったのは、国の制度によらず自治体独自に仕組みを作っている「地域活動支援センター」(略して「地活」)です。A型というちょっと役割の違うセンターを除くと市内に57か所あります。かつて作業所と呼ばれていた小規模通所施設を、川崎市は定員や利用者の数によってB型C型D型とわけそれぞれ補助額を決めています。この補助額の決め方があまりに理不尽だと声が上がっています。この話はもちろん具体的にうかがいましたが、どの施設の施設長さんももっとも時間を割いて話してくださったのは、なんと言っても障がい者福祉への熱い思いでした。

まず地活の補助の仕組みを書いておきます。国の制度の施設なら利用者一人一人に報酬が出るのでそれで運営するのですが、地活は川崎市独自で補助していて、定員15人以上で年間で月平均12名以上の利用があればB型と認定し、年間1250万円の補助を出します。C型は定員10名以上実利用人数8人以上、D型は定員5名以上実利用人数4名以上としているのですが、問題は、この実利用人数が基準を下回ると翌年はランクを下げられるという問題です。前年度B型だった施設が、何らかの理由で月平均12人に至らなかったら翌年はC型になり、補助金は200万円も下がるのです。家賃補助もこの類型に連動するので、家賃も人件費も変わらないのに、たいへんな額が下がってしまいます。そしてこの基準は16年間変わっていない!!!消費税が上がり、この物価高ですから実質下がっているわけです。

314557700_2224349414413641_7605418603374633318_nさすがにコロナでの利用者の減は市の要請でもあり、この2年間、そして来年度も従前の額に据え置くということが決まっています。これは共産党も議会で繰り返し取り上げてきました。でもこの仕組みはあまりにも理不尽です。とくに精神障がい者は、決まった時間に必ず来るということを強要しない、休むことも仕事、というのは常識です。精神障がいに至る過程でだれもが枠にあてはめられることを拒否することから様々な症状になるといいます。就労することだけが社会参加ではないのです。喫茶ほっとの施設長さんは「最大の支援は人とつながること。ここに毎日来ることだけが支援ではなく、電話でもいい、一日15分でもいい、ここに来たら安心できるという居場所にすることが地活の役割」といいます。

もっとびっくりしたのは、この補助金を使いきれなかったら返さなければならないということです。糸ぐるまの理事長さんは「作業所で作ったものの売り上げなどは運営経費に充ててはいけないと決まっているので、運営費は100%補助金で回すしかない。多少残った年は翌年施設整備などに使いたいがそれが許されない」と憤ります。どういうこと!!!

人件費の計算もひどいものです。15名以上のB型でも常勤1人、パート2名しか出ません。糸ぐるまさんでは家賃補助も足りず持ち出し。施設長の給与は20年間変わらず、大卒初任給のままだそうです。

国の制度の施設は、重度障がい者の方のためか、あとは就職につながるよう就労訓練をするところに大別されます。しかしそれには当てはまらない方たちが本当は多いのです。その受け皿として地活は大きな役割を果たしています。ここがいい、と長く通う人がおおいというのが、その意義を示しています。これこそ自治体独自の重要な役割でしょう。

しかし、この地活をもう増やさないと川崎市は言います。国の制度がそろってきたから、といいますが、実態は違います。結局市の予算の持ち出しを減らしたいのです。増やさないと決めてしまえば、あとは財政的に苦しくなったところがやめていくのを待つばかり、ということです。二か所の施設の皆さんは図らずもおなじことを言われました。「就労することだけが支援ではなく、その人にあった時間の過ごし方を見つけることで、その人生を豊かにすることができる」。まさに人権そのものです。これは何としても制度の改善をさせなければなりません。視察には10人の議員が参加しました。みんな同じ気持ちでふつふつと思いを持って帰ってきたと思います。