井口まみ
井口まみ井口まみ

岩手県宮古市・遠野市を視察しました

宮古市は、「住宅リフォーム促進事業補助」という制度について調査です。

市民が20万円以上の住宅のリフォームをすると、一律10万円の補助を出すというすごいもの。市民にたいへん喜ばれ、今年4月の発足時に5000万円の予算を組んだのが、わずか2週間で底をつき、5000万円追加しましたが、まだ足りず、先日の6月議会で1億5000万円追加。なんと3ヶ月で1547件、工事総額7億2300万円という仕事が、市内でおこなわれました。人口わずか63500人、23000世帯の町で、この3ヶ月の間に、15軒に1軒がリフォームをしたのです。

20万円程度といえば畳とふすまと障子の張替えとか、屋根の塗り替えとか、そんな仕事が多い。お隣に業者の軽トラが停まっていれば、「どこ直しているの?いくらかかるの」と声がかかり、つぎつぎと申し込みが入るそうな。地元の業者を使うことが条件で、受注トップは畳屋さんで、40数件受注したそうです。台所まわりのリフォームとか、床の張替えとか、お盆前に終わらせたいが無理かもしれないと、大工さんからは悲鳴が上がっているとか。

建設業は、全産業の中でも不況の影響をもろに受け、倒産や収入の落ち込みがもっとも大きい産業のひとつです。とりわけ中小零細が苦しいのです。そこに仕事ができるなら、どれだけ助かる人が多いか。私たちもこの間の6月議会で同じ制度を求めました。ところが市の答弁は「個人の資産を形成するものに税金は使えない」というものでした。リフォームは個人の家をきれいにするだけだからだというのです。市内の産業振興という観点に立てないのか。ここが焦点でした。

宮古市の担当者は明確に言いました。「市内の事業者を元気にすることがいまどうしても必要。個人資産の形成はダメだという議論を乗り越える意義を見出して、経済対策としてなんとしてもやりたいと必死で考えた」。要はやる気です。災害対策、バリアフリーなどなら川崎でもリフォーム助成を出しています。そこに「住宅の長寿命化」「エコ対策」などを付け加えて、ほとんどのリフォームを対象にしたのでした。

DSCF8460 しかし、宮古市の制度がこんなに人気なのは、制度をつくったからだけではありません。統計を見ても耐震補強とか、介護保険のバリアフリーとかはもともと制度がありますが、利用率は本当に低いのです。宮古の制度のすばらしさは、「いかに市民に使いやすくするか」という工夫があるからなのです。まず20万円から補助をするというハードルの低さがあります。さらに、手続きが信じられないくらい簡単で、それを業者が代行してよいということになっているので、高齢者でも簡単に申し込めるのです。耐震補強のリフォームは50万円以上からでないと出ないとか、10枚以上の書類を書き、何十年も前に建てたときの建築確認の書類を付けよとか、とにかくめんどくさい。これも大きなハードルを下げました。なので、大工さんが車に何枚も申請書類を持っていて、隣のうちの奥さんが「うちもやって」といわれたらすぐ申請できる。担当の建築住宅課の窓口には、10人以上が毎日申請に来るそうです。そこで臨時の窓口を作り、非常勤の受付の職員を2人増員して、対応しているのでした。

問題はこの補助がいまのところ、今年度一年限りだということです。ずっとこの制度を要求してきた地元の民主商工会の皆さんとも懇談しました。なんとしても来年度も続けさせたい、と強く言っていました。私も思わず担当者に「来年もやってくださいよ」と言ってしまいました。川崎市も、市民の暮らしを守るためにこうした前例をよく学ぶべきだ、と強く感じて帰ってきました。

遠野の市立の助産院の話はまたあしたに。